• INTERVIEW
  • 2020.03.03

日本を代表する水彩画家の柴崎春通さんがYouTubeで動画投稿を続ける理由【インタビュー】Watercolor by Shibasaki

「Watercolor by Shibasaki」というYouTubeチャンネルをご存知でしょうか?日本を代表する水彩画家の柴崎春通さんが、ご自身の水彩画技法を解説されている動画を投稿しており、現在では52万人を超えるチャンネル登録者数を誇っています。今回は、個展を開催されていた柴崎さんにお時間をいただいて、水彩画家になったきっかけや、YouTuberとしての活動についてお伺いしてきました!

水彩画講師柴崎春通さんがYouTubeと出会うまで

YouTubeで出会った世界中のファンが銀座の個展に押しかける

ーーこの度は個展の開催おめでとうございます。

今回の個展のテーマはありますか?

柴崎春通さん(以下柴)Youtubeの視聴者の方達からたくさん意見を寄せていただいたので、今回の個展ではYouTubeの動画の中で描いた絵の原画を主に展示しました。

皆さん、遠くからもたくさんお見えになっています。香港とか、北京とか、シンガポールとか。日本の遠いところからも飛行機で飛んできてくださったりね。

ーー海外からも!YouTubeのコメントを見る限りでも、海外のファンの方は多いですよね。

はい、チャンネル登録者数の半分は海外の方ですので。
ですから、「個展やるよ」って言ったら「行けない!」みたいなコメントが多くて(笑)
昔も開いたんですが、またニューヨークあたりでの個展もいいかなと少し思ったりしてるんです。

ーーニューヨークでの個展も素敵ですね!

油絵講師から水彩画の道へ。

ーー柴崎先生が水彩画を始めたきっかけをお伺いしてもよろしいですか?

はい、もちろん。
最初は、基本的に油絵を描いていたんですよ。

学校を卒業してから、講談社のフェーマススクールズっていう、美術の通信の学校に講師として呼ばれたんです。そこで油絵の担当講師として働き始めました。
まだ25歳くらいで、ペーペーでした(笑)

そんな中で水彩画に興味を持ったきっかけが、アメリカの水彩画インストラクターが描き方を教えてくれたことでした。
それから自分も水彩を始めて、だんだん水彩の仕事をするようになりました。

ーー最初は油絵を描いていたんですね!
それからは水彩のお仕事が増えていったんですか?

はい、講師を続ける傍ら、本の表紙を描いたりとか、出版社から「水彩のテクニック書を作ってほしい」という依頼があったりとか。
展覧会を開くようになると「水彩画を描いてみたい」っていう方がだんだん増えてきて、絵画教室を始めたのですが、当時は色々な場所で教えていましたので、結構忙しく、大変でしたね。

ーー教室も一箇所ではないでしょうし、飛び回る生活だったんですね

ビデオ講義の経験から「YouTuberになることに抵抗はなかった」柴崎さん

柴崎さんの息子さんの言葉がきっかけでYouTube活動を開始

ーーYouTubeを始めたきっかけはどのようなことだったのですか?

ある時息子に、
「YouTubeっていうのがあってね、お父さんの展覧会にはお客さんがたくさん見えるけど、どんなにたくさん来たって1000人くらいでしょ。YouTubeだったらもっとたくさんの人に見てもらえるよ。」
と言われて始めました。

ーー提案された時はYouTubeについてあまり知らなかったとお見受けしますが、抵抗はありませんでしたか?

そこまで抵抗はなかったですね。

むかしお仕事で「ビデオ講座」をやっていたんですね。カメラの先にいる生徒さんに向けて、お話ししながら実演で描いていくスタイルは、私にとってはごく当たり前のことでした。

「画面の向こうで見てくれている人のために」

ーーYouTubeに投稿している動画の内容は柴崎先生ご自身で考えられてるんですか?

制作や運営に関しては、息子と二人三脚でやっています。私は編集は出来ませんので、色々な方に助けていただきながら、動画制作しております。

ーー動画作りでこだわっている点はありますか?

そうですね。本格的な水彩画の描き方を、出来るだけわかりやすく伝えるために、実践的でシンプルな内容にすること。あとは、常にオープンマインドな気持ちで、画面の向こうで観てくれている人に語りかけるような動画作りを心がけています。

現実の講座とYouTube動画での共通点について

僕なりのカリキュラムがあって、地元の講座はもう40数年もやっているのですが、同じものを2度やったことはないんです。

ーーそうなんですか!?40年もやっていて…

もちろんそうです。
常に自分を新しくして、テーマを探して、なおかつ生徒さんのためになるもの、興味を持ってくれそうなもの、そういういくつものハードルのなかで選ぶわけです。

それから、今の講座はだいたい4時間から4時間半くらいぶっ続けなんですね。それで一枚描き上げてしまいます。

ーー早いですね…!

そうなんです。
僕が描いて見せて、それから皆さんが描いて、僕が見てあげて手つけて、また次のステップを僕が描いて、という風にしながら、一枚の絵を描き上げて帰るわけです。

おいでになる方の中には、力量の差がありますよね。
どんな方でも「今日はやってよかった」って思ってお帰りにならなきゃいけないんですよ。「私だけうまくいかなかった」じゃがっかりしちゃいます。
ですからそういう方達でも4時間の範囲内で描けるものを描きます。

あんまり複雑なものだと難しいですよね、
例えば人物の顔を描こうとしたらデッサンだけでうまくいかなかったりしちゃうんですね。
そういう時は転写っていう形をとります。

僕がデッサンをして、裏にカーボンをつけてなぞれば描けますよっていうお助けをしてあげます。色々工夫して、でもレベルの下がらない内容になるように考えています。

ーー講座の内容を考えるのも一苦労ですね…。

そうですね。
季節折々のことなど、興味を引くような内容にしようとか。

YouTubeもそういう風にやっています。だからこないだのアメリカ独立記念日の時は、花火を描いたりね。

ーーじゃあ講座の内容を考えている時と、YouTubeの動画の内容を考えている時は通じるものがあるんですね。

はい、まさにそうです。